北海道の漁家の伝統が紡ぐ味わい:十勝の飯寿司
飯寿司は、北海道の郷土料理で、主に北海道から東北地方の沿岸部で食べられている米、魚、野菜、塩で作る発酵食品です。最近では水産会社が製造した冷凍の飯寿司が年中出回っていますが、漁村では漁師の奥さんたちが家庭ごとに昔ながらの味を受け継いで作り、特に鮭を使った飯寿司は正月のごちそうになります。本稿では北海道の鮭の飯寿司について深掘りします。
飯寿司の原型は弥生時代に生まれた「馴れ寿司」⁈
飯寿司は主に魚介類と米(飯)、塩を材料として発酵した「馴れ寿司」の一種と言われています。一説によると稲作が始まった弥生時代には馴れ寿司の原型ができたと言われています。馴れ寿司の酸味は乳酸発酵によるもので、乳酸が増えることで酸っぱくなると同時に、アミノ酸などのうま味成分が増加し、酢による酸味とは違う、独特の風味に仕上がります。
酸性になることで雑菌の増殖が抑制され、冷蔵庫がなかった昔の日本では、たんぱく源を年中食べることができる保存食として作られるようになりました。飯寿司は馴れ寿司が進化した発酵食品と言えます。
米と麹が発酵助ける:乳酸菌が生み出す独特の風味
飯寿司の作り方は、硬めに炊いて冷ました米と、新鮮な魚、野菜類、麹を混ぜて樽に入れ、重石をのせて漬け込み、発酵させます。米や麹が発酵を助け、乳酸発酵による酸味が加わることで、鮭の旨味が増し、独特の風味が引き立つのです。野菜は大根やニンジン、キャベツ、生姜、鷹の爪などが一般的です。
カギを握る「塩抜き」:抜き過ぎても抜かな過ぎてもダメ!
魚はさばいて数日間塩漬けにし、冷水で塩抜きをしますが、この塩抜きの加減が味を決めるといっていいほど、とても大事な作業です。ここを失敗しては材料が台無しになってしまいます。塩を抜きすぎると、味も無く保存も効かなくなり、塩が残りすぎるとしょっぱくなってしまいます。
飯寿司は地域の伝統食:家庭ごとに微妙に違う味わい
飯寿司は低温発酵によって作られるため、初雪が降るころに漁師の家でつくられていたものが発祥とされています。メインとなる魚は北海道では鮭やホッケ、ニシン、サンマ、東北ではハタハタを使うなど、それぞれの地域で獲れる魚を使うので、地域ごとの味わいがあります。作るのは主に女性で、娘時代に覚えた母親の味、嫁いだ先の姑さんに教わった味など、地域や家庭によってつくり方が微妙に異なるのも特徴の一つです。
身が締まって旨味が凝縮:評価が高い十勝沿岸で獲れる鮭
北海道・十勝の沿岸で定置網漁によって捕獲される鮭は、身が引き締まり、旨味が凝縮され、各地で獲れる鮭の中でも評価の高い鮭です。漁師たちは鮭の選別から丁寧に行い、飯寿司の仕込みに最適なものだけを厳選します。飯寿司の美味しさの秘訣は、この選別の技術と、十勝の自然が育んだ鮭そのものにあるのです。
飯寿司仕込みは冬の風物詩:家族総出で協力
十勝の厳しい寒さの中で行われる飯寿司の仕込み作業は冬の風物詩です。仕込みには手間と時間がかかり、家族が協力し合ったり、近所の女性たちが共同で作業することが通例となっています。漁師の家庭では、冬の寒さが増してくる11月ごろから、鮭の塩漬けや塩抜き、米や野菜の準備といった一連の作業に取りかかります。
小分けして冷凍:飯寿司をおいしく食べるコツ
飯寿司は、冷蔵庫(5℃前後)で長期保管すると発酵が進んで酸味が濃くなり、味が落ちてしまいます。1回で食べ切れる量を小分けにして冷凍し、解凍後は2~3日以内を目安に食べ切るのがコツです。
まとめ:十勝の冬の味わい食卓に
北海道の冬の食卓に欠かせない飯寿司は、地元の自然と文化をそのまま詰め込んだ一皿です。通販を通じて全国からお求めいただけますので、この冬はぜひ十勝の飯寿司を食卓に加え、北海道の伝統と風味を存分に味わってみてください。