スルメイカの不漁時代に知っておくべき食べ方

スルメイカの不漁時代に知っておくべき食べ方

スルメイカは、日本の食卓に欠かせない海産物のひとつです。しかし、近年、スルメイカの漁獲量が減少し、その影響が各方面で感じられるようになっています。本コラムでは、スルメイカの生態、不漁の原因と影響、そして美味しい食べ方について詳しく解説し、その魅力と現状について理解を深めていただくことを目的としています。特に函館をはじめとする日本近海においてスルメイカがいかに重要であるかをお伝えします。

スルメイカの生態と広範囲の分布:日本近海から太平洋まで

スルメイカは、日本近海をはじめ、太平洋、日本海、東シナ海に広く分布するイカの一種です。一年生で、寿命はおおよそ1年程度とされています。産卵と成長の過程では、親イカが産卵した後、幼生が成長して成イカになるまでの過程を経て回遊します。この回遊性が高く、夜行性であるという特性がスルメイカの生活スタイルの基本です。

スルメイカの分布と回遊パターン:漁獲と不漁の関係

スルメイカは太平洋沿岸を中心に広く分布しており、日本海や東シナ海でも見られます。南の海で産卵し、北上しながら成長、そしてまた南へ下って産卵という行動パターンです。この広範な分布域により、さまざまな地域で漁獲され、食卓に供される機会が多くなっていますが、その生息域の変動もまた、不漁の原因の一端を担っていると考えられます。

スルメイカの夜間捕食行動と函館の漁火漁法

スルメイカは肉食性で、小魚やプランクトンを主な餌としています。夜間には浅瀬に移動して餌を捕らえる習性があり、この行動パターンが漁業活動にも大きく影響しています。特に夜間の漁では、光を使ってイカを誘引する手法が用いられます。漁火で海中を照らし、イカを釣る光景は函館の夏の風物詩にもなっています。

スルメイカ不漁の影響:いか踊りに観光、水産加工業まで

函館には「イカ踊り」という人気の踊りがあり、港まつりなどで披露されます。これはスルメイカ漁の繁栄を祈願するもので、多くの観光客が訪れます。また函館朝市では新鮮なスルメイカが販売されており、その場でイカを釣ったり、釣ったイカを調理してもらうこともできます。
さらにスルメイカは函館の主要な産業の一つであり、地元の経済に大きな影響を与えています。加工場や加工品も多く、地元の特産品として全国に出荷されています。
函館のスルメイカは、地元の文化や経済に深く根ざしており、その新鮮さと多様な食べ方で多くの人々に愛され、観光客もその魅力を堪能することができます。


しかし近年、スルメイカの漁獲量は急激に減少しています。2022年度の漁獲量は過去3番目の少なさであり、ここ10年間でその量は10分の1にまで減少しました。スルメイカが産業、観光の中心的役割を担っている函館では大きな打撃です。スルメイカの不漁が長引くことで、観光、水産業が受ける影響はますます深刻化しています。

気候変動と燃料高騰がスルメイカ漁業に与える影響

海水温の上昇と気候変動は、スルメイカの生息域に直接的な影響を与えています。温暖化の進行により、スルメイカの回遊パターンが変化し、従来の漁場から逸れてしまうケースが増えています。スルメイカの資源量は、自然の長期的な周期的変動にも影響されます。これにはエルニーニョ現象などの気象現象も原因の一つとみられます​​。これらの要因が複合的に作用し、スルメイカの不漁を引き起こしていると考えられます。
さらに、燃料価格の高騰も漁業活動に影響を及ぼしています。漁に出るためのコストが増加し、漁獲範囲が制限されていることも不漁の原因として挙げられます。

スルメイカ不漁の影響:漁業者収入減少と市場価格上昇

スルメイカの不漁により、漁業者の収入は大きく減少しています。同時に市場価格も上昇し、消費者にとっても負担が増えています。水産業、観光関連産業において雇用も減少します。さらにイカ飯や塩からなど、伝統的なスルメイカ料理を製造、提供する食品加工業、飲食業も影響を受けています。

持続可能なスルメイカ漁業管理と資源回復の課題

 

持続可能な漁業管理の一環として、漁獲量の規制や漁期の制限が行われています。これにより、スルメイカの資源回復を図ることが期待されています。しかし、カニやウニなど行動範囲が狭い魚介類と違い、ニシンやサンマ、スルメイカなどの回遊魚は回遊ルートの解明や捕食方法、産卵場所、産卵方法の特定など、未知の部分が多く、資源回復は容易ではありません。さらにスルメイカの回遊は広範囲にわたるため、関係諸外国との協調も必要です。

スルメイカ養殖の課題と現状:養殖できない理由とは

スルメイカの養殖の可能性についても研究が進められていますが、イカは生息領域が広く行動パターンの再現が困難なこと、採卵や稚魚の捕獲が難しいこと、生きている小魚を餌として捕らえる習性があることなどの理由から、現状では商業ベースでの養殖は実現していないのが実態です。

スルメイカのおいしい食べ方

スルメイカは多様な料理に使われる食材です。代表的な料理としては、イカそうめん、塩辛、イカ焼きなどが挙げられます。また、スルメイカを使ったユニークなレシピもあります。以下にスルメイカの新たな魅力を発見できるレシピを紹介します。

  1. スルメイカのイカ墨リゾット

材料:スルメイカ: 2杯、イカ墨: 2袋、米: 1カップ、玉ねぎ: 1個、ニンニク: 1片、白ワイン: 1/2カップ、魚介の出汁: 4カップ、パルメザンチーズ: 適量、オリーブオイル: 適量、塩、胡椒: 適量

作り方:スルメイカを輪切りにし、ワタを取り除く。イカ墨を用意する。フライパンにオリーブオイルを熱し、みじん切りにした玉ねぎとニンニクを炒める。米を加えて炒め、白ワインを注ぎ入れてアルコールを飛ばす。魚介の出汁を少しずつ加えながら、米が柔らかくなるまで煮る。イカ墨とスルメイカを加え、さらに煮る。塩、胡椒で味を調え、パルメザンチーズを加えて仕上げる。

  1. スルメイカのカルパッチョ

材料:スルメイカ: 1杯、レモン: 1個、オリーブオイル: 大さじ2、パルメザンチーズ: 適量、ルッコラ: 適量、塩、胡椒: 適量

作り方:スルメイカを薄くスライスする。スライスしたスルメイカを皿に並べ、レモン汁を絞りかける。オリーブオイルをかけ、塩と胡椒で味を調える。ルッコラとパルメザンチーズをトッピングして完成。

  1. スルメイカの中華風炒め

材料:スルメイカ: 2杯、ピーマン: 1個、パプリカ: 1個、ニンニク: 2片、生姜: 1片、醤油: 大さじ2オイスターソース: 大さじ1、ごま油: 大さじ1、片栗粉: 適量、塩、胡椒: 適量

作り方:スルメイカを輪切りにし、片栗粉をまぶしておく。フライパンにごま油を熱し、みじん切りにしたニンニクと生姜を炒める。ピーマンとパプリカを加えて炒め、スルメイカを加える。醤油とオイスターソースで味を調え、塩と胡椒を加える。全体に火が通ったら完成。

スルメイカのさばき方:新鮮なイカで美味しい料理を作る手順

 

スルメイカは生のまま、足がついて冷凍、胴体だけ冷凍とさまざまな形で売られています。足が付いた状態のスルメイカのさばき方を紹介します。

頭を切り落とす:スルメイカの胴と頭がくっついている部分に包丁を入れ、切り離します。頭の部分を引く出すとゴロ、内臓がついて出てきます。ゴロ、イカ墨は料理に使う場合があるので捨てずにとっておきます。
軟骨を取り除く:イカの胴の中にある透明な軟骨を取り除きます。軟骨は手で簡単に引き抜けます。
皮をむく:イカの胴の表面の皮をむきます。包丁の背を使って、皮を少しずつ剥がしていきます。薄皮も残らないように丁寧にむきます。滑って剥きにくい場合は布巾やキッチンペーパーを使いとよいでしょう。
足を処理する:頭と一緒に切り落とした足の部分を処理します。足の付け根の部分にあるくちばしを取り除きます。くちばしは硬いため、取り除く際には注意が必要です。
洗浄:イカの胴と足を水で洗い、表面のぬめりや残った内臓をきれいにします。洗った後はキッチンペーパーで水気を取ります。
切り分ける:イカを料理に使いやすいサイズに切り分けます。輪切りや縦に細切りにするなど、用途に応じて切り方を変えます。
注意点:イカの墨袋に注意しながら内臓を取り除くと、墨が飛び散るのを防げます。新鮮なイカを使うことで、より美味しい料理を作ることができます。

まとめ:スルメイカの魅力とレシピ

スルメイカの魅力とその不漁がもたらす課題について解説してきました。スルメイカの資源回復に向けた取り組みは、持続可能な漁業管理と環境保護が鍵となります。そして、スルメイカを楽しむためのさまざまなレシピを通じて、その魅力を再確認することができます。今後もスルメイカを長く美味しく楽しむために、私たち一人一人ができることを考えていくことが大切です。

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