「いつものテーブルにチーズを」
2003年にチーズ作りが始まった十勝の幕別町にあるチーズ工房NEEDS(ニーズ)。当時は若者たちのチーズ職人集団として地元でも注目され、今では経験豊富な立派なチーズ工房として十勝管内のみならず、東京のレストランにも出荷する有名工房へと駆け昇っていきました。
有名工房となったのは、商品の開発からプロデュース・販売活動など多岐に渡る努力の賜物。長年受け継がれてきたその熱いマインドを商品へと注ぐのは、現在の工場長・磯部 公児(いそべ こうじ)さんです。
生まれ育ちは兵庫県。10年ほど東京でサラリーマンとして活躍しながら、自分の人生・将来について考え始めた磯部さんは一念発起し北海道へ。本州とは違う生活スタイルを実感しながら、十勝から苫小牧、再び十勝へと拠点を戻し、今この地にたどり着いたと教えてくれました。農業法人で勤務していた時代には、NEEDSのモッツァレラから出たホエイを使ったホエイ豚の飼育も担当していたとか。その時から関わりがあったこと、まさにその“縁”が磯部さんの今に繋がっています。
これから先も変わらないチーズ工房としての使命
磯部さんがNEEDSで働き始めた頃は、チーズ業界について知らないことも多く、消費者である私たちと同じ立場だったと言います。実際にNEEDSに勤務するようになって気づいたのは、「いつものテーブルにチーズを」というモットーに初めて触れた時感じた、他の工房との違い。大手メーカーやフェルミタイプの工房とも違う、NEEDSならではの立ち位置です。チーズの作り方にはもちろんこだわりつつ、安定した量をしっかりと供給することができ、幅広い年代の人に楽しんでもらえるようなやさしい味。普段の食卓に上がるチーズという点を考えると、今あるNEEDSの商品ラインナップはまさしくモットーに沿っているんだな、と感じたそうです。いつでも気軽に手にとってもらえるチーズを作り続けていくこと、それが今までの、そしてこれからも変わらないNEEDSの軸になっていくと語ってくれました。
消費者から生産者となって生まれたチーズへの想い
チーズの本場として広く知られている美食の国・フランス。1人当たりのチーズの年間消費量を見てみると、その量なんと約26kg!堂々の世界一です。一方で日本人は約2.4kgというんだから、その差は歴然。
そこで磯部さんはNEEDSヘの転職を決意した時、自分は1年間でどれだけのチーズを食べられるんだろうと、記録をつけました。「それでも15kg程度なんですよ。」と笑いながら答えてくれました。その後研修でフランスに行った時にスーパーで陳列されている乳製品の量を見て「敵わないなあ。」と感じたそうです。文化そのものの違いはあれど、これが本当の意味での「いつものテーブルにチーズを」が実現されている風景でした。
たとえ本場フランスには敵わなくとも、その熱心な姿勢がチーズへの想いを育てています。1人の消費者が生産者として研究を重ねる姿が、十勝のチーズ工房として名を馳せるNEEDSのこれからを支えていくのです。