日本の肉用牛の深層:和牛、交雑種、ホルスタインの真実とその評価
日本の肉用牛は大きく分けて和牛、交雑種、ホルスタイン(雄)の3種類です。
和牛は黒毛和種(くろげわしゅ)、褐毛和種(あかげわしゅ)、無角和種(むかくわしゅ)、そして日本短角種(にほんたんかくしゅ)の4種あります。
酪農家が飼育するホルスタインは雌雄の産み分けをしないので、生まれてくる雌雄は半々です。メスは搾乳用に、オスは肉用牛として育てます。
【F1(エフワン)】と呼ばれる交雑種は大半がメスのホルスタインとオスの黒毛和種の掛け合わせです。この記事ではなぜ交雑種を作るのか、に焦点を当てます。
魚石牧場の奇跡:北海道十勝の交雑牛が和牛を超える評価を獲得
北海道・十勝の豊頃町にある魚石牧場(代表・魚石賢志さん)は2017年、国内最大の枝肉共励会の交雑去勢牛の部で、部門最高位となる最優秀賞を受賞したこともある実力派若手農家です。一般に牛肉の肉質は上から和牛、交雑種、ホルスタインの順ですが、魚石さんの牛は交雑牛でありながら、A5ランクを獲得し、和牛をしのぐ評価を得られました。
交雑牛の実態:北海道のリードと“ハーフ”の特性が生む最高の肉質バランス
全国に交雑種は55万7000頭が飼育されています(2022年7月現在)。うち北海道は18万頭で32%を占め、ダントツです。とはいえ、北海道のホルスタイン(雌)は80万頭なので、乳用牛に比べるとかなり少ない頭数です。
交雑種の大半はホルスタインの雌と黒毛和牛の雄の掛け合わせで生まれてきます。いわば「ハーフ」ということです。生まれてくる交雑牛のほとんどはホルスタインより小さく、和牛より大きい、つまり中間の大きさです。また肉質も和牛のようにサシを入れるのは至難の業ですが、ホルスタインより脂の乗りはよく、これもまた、中間に評価されます。中間であるがゆえに、双方のいいところが交雑牛には授かっているのです。
初産ホルスタインと和牛の交雑:酪農家が選ぶ安全第一の理由とその背景
牛もお産に際しては難産になることもあり、時には母子ともに命を落とす危険性もあります。それは酪農家にとっては悲しいことであり、大きな損失にもなります。ホルスタインの初産(初めての出産)は体が小さいオスの和牛と掛け合わせることで、一回り小さな交雑牛が生まれてきます。つまり安産で最初の出産を乗り越えられるということです。酪農家はメスのホルスタインが生まれることを望みますが、まずは安全第一を考え、第一子を和牛と掛け合わせる酪農家も多いのです。生まれてきた交雑牛は肉牛専門の農家へと売却されます。
交雑牛の強み:早い成長と病気への強さが畜産業者にもたらす経済的・作業的メリット
メリットはほかにもあります。交雑種は和牛に比べて成長が速いのです。和牛は成牛として出荷されるまでに3年かかりますが、交雑牛は2年と3カ月ほどで市場に出されます。早く出荷することで飼料が節約できるのです。さらにもう一つのメリットとして、病気に強いということが挙げられます。牛が病気にかかると大きな損失につながります。畜産業者にとって、病気に強いというのは、費用の面でも作業の面でも、とても大きなメリットとなります。
スーパーの「国産牛」の真実:ホルスタインや交雑牛と「和牛」の違いを知ろう
スーパーでは交雑牛や雄のホルスタインは「国産牛」として売られているケースが多く「交雑」「ホルスタイン」の文字はほとんど見当たりません。イメージの問題でしょうか。ただ国産には間違いありません。外来牛であるホルスタインとの交雑なので「国産和牛」は偽りになります。日本で生まれ育った牛ではありますが「和牛」の二文字は使えません。
まとめ
交雑牛は「和牛より大きい」「和牛より成長が早い」「ホルスタイン(オス)より肉質がいい」「ホルスタインの初産を安産にする」「和牛より安い」と多くのメリットを抱えて生まれてきます。安くておいしい交雑牛は、食ベレア北海道でも取り扱っています。ぜひサイトでこだわりの「国産牛肉」お買い求めください。