熟成肉の科学と食文化:古代から現代までの肉の風味を変える技術
熟成肉の秘密:アメリカの肉食文化から学ぶ、肉をおいしくする古代の技術
よく「熟成肉」ということを聞きます。肉は鮮度がいいほどおいしいんじゃないの⁈熟成なんてしたら腐らない⁈と疑問に思う人も多いでしょう。肉食文化の先進地、アメリカではこの熟成肉の技術が確立され、ずっと昔から牛肉をよりおいしく食べる方法として用いられてきました。日本でも最近、肉を熟成させて販売している店も多くみられます。今回は「肉の熟成」について考察します。
肉の熟成プロセス解説:旨みを5倍に増やし、柔らかさを生む科学
そもそも肉を熟成させるとどう変わるのか。肉は熟すと、酵素と湿度、温度の総合的な働きにより、タンパク質が分解されてアミノ酸になります。旨み成分のアミノ酸の量が5倍~6倍に増え、旨味を増します。さらに肉の繊維がほぐれるため、軟らかい食感が生まれます。
熟成技術の起源と進化:保存法から発見された肉の旨味を増す古代の知恵
冷蔵庫、冷凍庫がなかった時代の肉の保存方法の1つとして生まれたのが、この「熟成」です。水分が抜けること、表面が菌に覆われ、中まで腐敗しないことで、長期間の保存が可能だったのです。それがかえって旨味を増すということがわかり、熟成の技術が発達したのです。
ドライエイジングとウェットエイジング:肉の熟成方法の違い
熟成の方法はいくつかありますが、大きく分けて「ドライエイジング」と「ウェットエイジング」があります。専用の熟成庫を使用する「ドライエイジング」は庫内の環境を温度1℃、湿度70~80%を保ち、空気を循環させて熟成させる方法です。熟成を促す微生物を繁殖させ外部からの雑菌の付着を防ぎながら熟成を待ちます。
ウェットエイジングの秘訣:真空パックで旨味を増し柔らかくする肉の熟成術
「ウェットエイジング」は部位ごとに切り分けられた肉を真空パックに入れ、10日前後寝かせる技法で、肉を輸送する際に肉の劣化を防ぐ方法として誕生しました。肉を数日間、密封状態で寝かせることで肉質が柔らかくなり、旨味が増すことがわかり、この技法が確立されました。
家庭での肉の熟成に挑戦する前に:なぜ専門技術が必要なのか
家庭では難しいのでやらない方が無難です。ドライでもウェットでも、家庭用冷蔵庫は4~6℃なため、温度が高く使えません。真空パックにしたり、空気を循環させるのも不十分で、熟成せずに腐敗してしまう確率が高いです。肉の熟成は大きなブロック肉を使うので、腐ってしまえばかなりの損失とショックで、後悔します。
スーパーの牛肉も熟成済み?日常の肉製品に隠された熟成の秘密
スーパーで売られている牛肉も、実は少しだけ熟成しているのです。牛は死後にいったん硬直が起こり、その後硬直は収まって軟らかくなります。この軟らかくなる変化自体がすでに「熟成」であり、一般的に販売されている牛肉も5-10 日間の熟成期間を経て、軟らかくなってから販売されます。これをさらに熟成させたのが「熟成肉」なのです。
熟成牛肉の極上食べ方:シンプル調理で引き出す最高の味と食感
熟成させた牛肉の美味しい食べ方はシンプルに塩コショウだけでOKです。うまみが増しているので、それだけでおいしいのです。軟らかさを堪能するには厚みのあるステーキが最適です。ステーキは焼き過ぎないように!焼き過ぎて硬くなってしまえば、熟成肉ならではの食感が台無しになります。