養殖困難なベニザケの魅力と美味しい食べ方
鮮やかな赤い身が特徴の鮭「ベニザケ」。その美味しさと栄養価で多くの人々に愛されています。しかし、日本ではほとんど水揚げがなく、大半はロシアなどからの輸入です。この記事では、ベニザケの生息域や生態、なぜ養殖が難しいのか、ベニザケの美味しい食べ方やユニークなレシピなど、いろいろ解説していきます。
日本で獲れないベニザケとは?その特徴と生態
ベニザケは、サケ科に属する魚で、その美しい赤色の体が特徴です。主に北太平洋、ベーリング海を中心とした冷たい海域に生息しています。日本で売られているベニザケのほとんどはロシア、アメリカ(アラスカ)、カナダなどからの輸入で、国産は日本海、オホーツク北部の海域でごくわずかに漁獲されるだけです。
日本で獲れるものはわずか0.01%未満で、回遊中に日本近海の200海里内を通り過ぎる際に普通のサケやカラフトマスと一緒に流し網に入るものだけです。
ベニザケの不思議な生態:2回上って2回下る
ベニザケは一般的に川を遡上して湖に入り、さらに湖に注ぐ川を遡上して産卵します。河川上流部でふ化した稚魚は2~3年間は湖で暮らし、ある程度大きくなってから大海原へ出て大きく最長します。湖ではミジンコやプランクトン、甲殻類をよく食べ、またユスリカのさなぎや小さな昆虫なども餌にしています。
赤みが濃くなる理由:アスタキサンチンの秘密
海へ降りてからは、プランクトンを中心にイカやオキアミ、カイアシ、小魚などを餌にしています。ベニザケの赤さは、主にアスタキサンチンという色素によるものです。この色素は、海の植物プランクトンが体内で合成し、それを動物プランクトンが食べ、さらにその動物プランクトンをベニザケが食べることによって身の赤みが濃くなるのです。
必ず生まれた川で死ぬ:目を見張る「ビッグラン」とは!
3~8年で成熟して母川回帰します。サケ属の仲間の中では最も母川回帰性が強く、的確に母川を認識すると言われています。遡上して産卵、放精すると、一般のサケと同じく、力尽きて死んでしまいます。
ベニザケがよく上る河川として、カナダのフレーザー川は有名で、4年に1度、200万尾が一斉に川を遡上する光景は「ビッグラン」もしくは「レッドラン」と呼ばれています。ほかにロシアのアナディリ川などもベニザケが多く遡上する川として知られています。
日本にも生息:陸封型のベニザケ「ヒメマス」
陸封型のベニザケは「ヒメマス」と呼ばれ、日本では阿寒湖や十和田湖に見られます。ヒメマスはベニザケほど大きく成長はしませんが、スポーツフィッシングなど、地域の観光資源として保護され、活用されます。
成長速度2倍の内陸養殖:膨らむ事業化への期待
日本国内ではほとんど漁獲されず、輸入に頼っているベニザケですが、環境にデリケートで、汚染に弱く、清い海でしか育たないため、養殖は困難と言われています。なので、輸入されるベニザケはすべて「天然」です。しかし、近年海水を使用せずに内陸で魚を育てる新しいタイプの技術で、ベニザケの養殖を目指す世界初の試みが、福島県で始まっています。塩分濃度の調整に使われているベニザケのエネルギーを養殖に使う水の塩分濃度を一定にすることで省エネ化し、その分のエネルギーを成長に回すことで、成長速度が2倍にもなるということで、今後の事業化に期待が持たれます。
抗酸化作用に期待:アスタキサンチンの効能
前述の通り、ベニザケには普通のサケよりアスタキサンチンと言う成分を多く含んでいます。アスタキサンチンは強力な抗酸化作用があり、疲労回復や動脈硬化の予防に役立つと言われています。また、ベニザケには他のサケ類よりもビタミンB12とビタミンDが多く含まれています。ビタミンB12は貧血を予防し、細胞の生まれ変わりや新しい赤血球を作り出すのに不可欠なビタミンです。ビタミンDは食べ物からカルシウムが吸収されやすくなるようにし、骨や歯の形成をサポートします。
DHA、EPA…:ベニザケの健康、美容効果とは
サケ同様に不飽和脂肪酸であるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれ、中性脂肪を低下させて脂質異常を予防し、動脈硬化や虚血性心疾患の発症を抑える働きが期待されます。また、血液がサラサラになるので高血圧の予防にもつながる他、DHAには脳を活性化させる効果があり、学習や記憶能力の向上にもつながると言われています。
どんな食べ方もサケのワンランク上:大人気のおにぎりの具
ベニザケは、その鮮やかな色と豊かな風味で多くの料理に活用される人気の魚です。一般的にサケ(アキアジ)を使う料理のほぼすべてを、このベニザケに置き換えることが可能で、味も風味も見た目の美しさもワンランクアップします。人気なのはストレートにおいしさが感じられる塩焼きです。そのまま焼いて食べてもよし、おにぎりの具に入れればさらによしです。
おしゃれな洋風アレンジとしてクリームソースとの組み合わせも相性が良く、バターで炒めた玉ねぎとマッシュルームに生クリームを加えて、とろっとしたソースを作り、このソースをこんがり焼いた紅鮭にかければ、一気に豪華なメインディッシュへ変身します。
ヘルシー志向の方には蒸し料理がおススメです。野菜やきのこ、バターを入れてホイルに包み、オーブンで蒸すことで素材本来の旨味を引き出せます。
知れば知るほど食べたくなる:ベニザケ!
いかがでしたか?「冷たい海を好む」「アスタキサンチンにより身が赤くなる」「どんな料理もサケのワンランク上」…。ベニザケについて知れば知るほど食べたくなりますね。これらの情報を活用して、日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?近所のスーパーに売っていない方は、ぜひ通販でお買い求めを!