タコが食卓から消える⁉世界的な価格高騰の波
タコはその独特な食感と風味で多くの日本人に愛されています。しかし、近年の急激な価格高騰により、庶民の味方だったタコが高級食材に姿を変えつつあります。本稿ではタコの種類や魅力、レシピ、そして価格高騰の背景などについて詳しく解説します。
タコの種類と生態:高い知能・カモフラージュの秘密
タコは海洋生物の中でも特に興味深い存在で、その多様な種類と独自の生態が魅力です。柔軟な体と8本の腕を持ち、「海の賢者」といわれるほど高度な知能を備え、カモフラージュ能力など、多彩な特徴があります。また、日本では食材としても親しまれ、たこ焼きや刺身、から揚げなどさまざまな料理で楽しまれています。このように、タコはそのユニークな性質と文化的価値から、多くの人々を惹きつける存在となっています。
全国一の北海道のタコ漁獲量は国内の67%
2019年の日本のタコの漁獲量は年間で約3万5,000トン。漁獲量が多い地域は北海道、東北、瀬戸内海です。北海道では主にミズダコ、ヤナギダコが多く、漁獲量は全国の67%を占めます。一方瀬戸内海ではマダコが多いようです。
タコの輸入ははるか遠くのアフリカ・モーリタニアから
タコ類の輸入量は1993年に13万トンでピークを示しましたが、2001年以降が急減し、2008年には4万5,000トン、2019年には3万4,900トンで、国内漁獲量とほぼ同量でした(財務省貿易統計)。日本がタコを輸入している国は意外にも西アフリカの国々で、モーリタニアとモロッコからの輸入が大半を占めます。
資源保護の観点:水深や箱の数に厳しい規制
タコ漁には主にタコ籠漁、タコ箱漁、樽流し漁の3つの漁法で漁獲します。
タコ籠漁は主に北海道の宗谷地方で行われている漁法で、餌を入れたタコ籠(バッタン籠)を海に設置するシンプルな漁法です。地元の漁協では資源保護の観点から、漁獲する海域の水深や籠の数、漁獲するタコの重量などを制限しています。
タコ箱漁はタコ籠漁に似た漁法で、タコが狭い場所を好む習性を生かした漁法です。タコ箱漁ではいくつかの連結した箱を海へ設置し、定期的に箱揚げを行います。
樽流し漁は北海道内で一番の漁獲量を誇る宗谷漁協でメインに行われている漁法です。この漁法では樽に仕掛け(いさり)を付け海に漂わせる方法が用いられており、縄張りに侵入した仕掛けにミズダコが飛びつくようになっています。
日本人が漁法を伝授:モーリタニアでタコ漁が盛んな理由
なぜはるか遠い国のモーリタニアからタコを輸入しているのでしょうか。モーリタニアはもともと水産物を食べる文化はほとんどありませんでした。モーリタニアの近海は、日本の三陸沖のように寒流と暖流が交差して、とても豊かな漁場となっています。浅瀬が続いていて、エサとなる貝類が豊富だったため、タコが生息する条件を満たしていたのです。日本から派遣されたJICA(国際協力機構)の隊員がタコツボ漁の技術を伝え、需要の高い日本への輸出に販路を見出したのです。
限られているタコの需要国:ヨーロッパではごく一部
タコを食べるのは日本人だけではありませんが、どこの国の人もみんな食べているというわけではありません。タコを食べる国は日本を主とする東アジア諸国、地中海沿岸諸国(ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガル、南フランス)、南太平洋の島々です。
日本は昔からタコを食べ、全世界のタコ消費量の約3分の2を消費する世界一タコ好きな国民です。一方、ヨーロッパの多くの国ではタコは食卓に出ることがなく、スーパーでもほとんど目にすることがありません。また、アジアでも韓国やタイで食べる習慣があるくらいで、中国でも自国での消費量は多くはありません。
日本が「買い負け」する原因:円安と不漁と…
タコの国際的な価格は近年高騰しており、日本は高くて買えない、いわば「買い負け」の状態になっているのです。理由は円安と日本国内の不漁に加え、スペインやイタリアなど、タコを食べる国々の観光客が増え、需要が高まっていること、そして「デビルフィッシュ(悪魔の魚)」と呼ばれ、敬遠してきたアメリカが、ヒスパニック系の移民が食べるようになったことで輸入が増えていることが挙げられます。
この先も高騰続く⁉やがて食べられなくなるかも!
お正月には欠かせない食材のタコ。お刺身のほか、ザンギや酢ダコ、タコ焼き、しゃぶしゃぶなど、煮物や和え物、揚げ物、炒め物、サラダ、マリネ、アヒージョ…。さまざまな料理に対応する庶民の味方が、だんだんと一般家庭の食卓から遠のいてしまう可能性があります。価格は上昇途中で、この先どこまで上がるか分かりません。カニやウニ、アワビ、イクラのような高級海鮮になる前に、いっぱい食べておくのが得策かもしれませんね。